2016/09/23

022 (風、テレビ、穏やかな運命)<指定なし>

 


 一枚のDVDが送られてきた。


 私はそれをプレーヤーにセットして、再生ボタンを押す。すると、高校での教え子が二人、海を背景に映っっていた。男が一人、女が一人。
 その二人は笑顔で、こちらに話しかけてくる。
 それは、その二人の結婚式で用いられた新郎新婦のビデオであった。あの二人のことは今でもよく覚えている。何かと騒がしい二人だった。明るく朗らかでありながら、進路相談では将来に悩む、一般的な生徒であった。他の生徒とさして変わったところはないのだが、それでも私が二人のことをよく覚えているのは彼らがよく私に話しかけてきたからである。
 二人は仲がよく、付き合っているということは知っていたが、まさか結婚するとは思っていなかった。私は仕事の都合で彼らの結婚式に行くことはできなかったが、大学に入ってからも交際を続け、結婚に至ったと聞いている。このまま末長く、良い関係を続けて欲しいと切に思う。
 二人の喋りが終わると、彼らの友人の映像が映る。そして、その後ろには鯉のぼりが風にたなびいていた。今までの教え子は彼ら以外にもたくさんいたし、今も増え続けている。私にできることは少ないが、その鯉のぼりが大空を悠々とたなびくように、穏やかな運命を歩んで欲しいと思うばかりである。