20161005
035(曇り、窓、ぬれた記憶)<ギャグコメ>
曇りガラスの向こうを眺めるのが好きだ。
普通のガラスでは物足りない。それでは向こう側の景色が透けて見えてしまう。
向こうに何者かがいるのに、顔が見えない。存在しているということしか感じられない。
そんな曇りガラスのことを、私は気に入っていた。
特に、雨の日の曇りガラスは格別だった。
その時、もはや窓は景色よりも音を伝えてくる。
雨の音。
曇りガラスが濡れて、窓を伝う。曇り空から雨が降る。
そんななんとも言えない天気の時、洗濯物を取り込みに外へ出かけると、どうしても濡れてしまう。
どうしてかはわからないが、その瞬間がたまらなく好きだった。