2016/09/23

016 (神様、PSP、ゆがんだ城)<邪道ファンタジー>

 


 神の力を手に入れた。


 造物主にも等しい、この力。私はこの力でもって、我が城を建て直す。
 王国の再建を、ここから始めるのだ‐‐


 あれは、ある月夜の晩だった。私は城(プレハブ小屋)の屋根に上り、星を見ながら酒(パック)を飲んでいた。北極星を見つめていると、夜空を何かがよぎる
のが見えた。流れ星かと思ったが、どうやらどんどんこっちに近づいて来るようである。私はボケっとその物体を眺めていた。
「ホゲッ!」
額に鈍い痛みが走る。思わず、仰向けに仰け反り帰った。
「何だ……?」
辺りを見回し、落ちてきた「何か」を探る。探すというほどなく、それはすぐに見つかった。なぜなら、その物体は片面が自ら発光していたからである。発光している面の左右に、何やら出っ張りがある。縁の方には、「PSP」という線‐‐ないは絵、だろうか‐‐が描かれていた。
「ピロリ!」
「ひっ!」
その物体から音がする。私は、思わず出っ張りの一つを指で押してしまった。
 ドサッ、という音が正面から聞こえた。見ると、何やら正方形の塊のようなものが出現していた。屋根から下りて、その物質の方へと向かう。それは、私の背丈よりは一回りは小さい、立方体であった。
 恐る恐る、手で触れてみる。何の反応もない。傾けてみると、質量はそこまでないようだ。持ち上げてみると、大変に軽く、簡単に持ち上がる。試しに剣(通販で買った包丁)で切りつけてみる。ガキッという音がして、刃が欠けた。


 ‐‐これは、使える……


 そして、私は三時間に及ぶ、城の製作に取り掛かった。
 その「黒き物体」を操作し、必要な資材を生み出す。一体、どのような原理が働いているのかはわからないが、操作すれば様々な立方体が姿を現した。私はその立方体を運んでは積み、運んでは積みを繰り返して、プレハブの小屋をまず囲った。そして壁を作り、三階層までをまず作り上げた。
 私は恐るべき重注力で作業を続けた。酒(パック)の酔いもすっかり覚めていた。私は作業を続け、八階層にまで至る。そして、プレハブ小屋の真上に位置する場所に、最高の玉座を作った。
 ここまでを作り終えて、横から眺めてみることにする。
「あちゃー……」
軸がずれている。作り始めの三階層までと、その後の八階層までとで軸がずれており、歪んでいる。
「まあ、いいか……」
気を取り直し、最上部の玉座に座る。
「これが我が城だ……」
酒(ちょっといいやつ)を飲みながら、北極星を眺める。一仕事した後は最高である。
 この「黒き物体」の力で、王国を再建するのだ‐‐


 その時、黒き物体の明かりが消えた。
「へっ!?」
体が落下する感覚を感じる。
「ぐへえッ!」
ドガっ、という音ととも、プレハブ小屋の屋根の上に落ちる。
 そこで、意識を失った。



 目覚めた時、右手には酒(パック)が握られていた。「黒き物体」は見当たらない。
「夢……?」
私は寝ぼけ眼で北極星を眺める。



 プレハブ小屋(籠城)の夢だったか……。
 私は酒を一口飲み、もう一眠りすることにした。