2016/09/23

030(島、目薬、最高の可能性)<ホラー>

 


 


 無人島に一人きり。


 


 最寄りの島から、小船でこの島までやって来るのに丸三日。思えば遠くまで来たもんだ、と感慨深い。小さな小さな無人島。私はここに、とある薬品のもととなる材料を探しにやってきたのだった。
 うまく見つけることができれば、高値で売ることができるだろう。かつての錬金術士が記したとされる書物の中にある薬草。そのエキスを元に、万物を見通すことができる目薬をつくることができるという。噂については眉唾ものだが、買い手がいれば私にとってはそれで十分だ。効果のほどは試したい奴が試せばいい。
 砂浜に小船を固定し、島の奥へと進む。人の気配はなく、鬱蒼と木々が茂っていた。薬草の形は頭の中に叩き込んでいる。見落とすことがないように、慎重に進んで行った。
 二十分ほど分け入った頃、私はその薬草を見つけた。間違いない。探していた薬草だ。私はその薬草を丁寧に摘み採り、鞄へとしまった。


 



 やがて、万物を見通す目薬の噂は広まり、薬草を巡って多くの男が海に乗り出した。結果、その薬草もまた、今となっては書物の中に確認されるだけだという。