2016/09/23

010 (春、橋、真の脇役)<童話>

 


 僕は、生まれ変わったら、この葉っぱになりたい。
 T君は、そう思いつきました。


 T君は、橋のたもとで待っています。
 橋の向こうから、春が来るのを待っています。
 でも、T君は飽きてしまします。
 春を待つのをすぐに飽きてしまいます。


 T君は、とてもせっかちなのでした。


 T君は思いました。
「どうして春は、すぐに来てくれないんだろう」
 T君は、クリスマスはが来た後は、残りの冬は全ておまけと思うような男の子でした。


 T君は、春が大好きです。
 それは、桜やつくしが大好きです。


 でも、何よりも、大好きなのは桜餅でした。
 美味しいあんこ、綺麗な桜色、そして、何よりも塩っ気のある葉っぱがたまりませんでした。


 そして、彼は思います。
 桜餅には、この葉っぱが欠かせないと。


 僕も、大きくなったら桜餅の葉っぱみたいになりたい。
 一番ではなく、二番目。


 絶対に欠かせない二番手になりたいと、春を待ちながら、T君は思いました。